07年7月25日

 山本周五郎の円熟期に書かれた「赤ひげ診療譚」。

多作な作家ですから、代表作と言ってもいろいろな作品を
挙げる人がいるでしょうが、「赤ひげ診療譚」が一番好き。
という方も多いのではないでしょうか。
 
 黒澤明が映画化したことも、大きな話題になりました。
「赤ひげ」は、黒澤映画の一つの到達点となった作品でもありますから、
文学史にも、映画史にも残る稀な作品です。
 
 余りにも映画の印象が鮮烈なので、映画を先に観てしまうと、
登場人物が、三船敏郎や加山雄三の姿になって思い浮かんでしまいます。
読んでいても、映画を見ているような印象です。
とは言っても、小説ならではの良さは勿論、全編に貫かれていますので、
一気に読み進んでしまいます。
 
 人間の底深い闇、判らなさ、不思議さが、さまざまなエピソードを通じて
訴えられてきます。また、不条理な社会、育ってきた環境が、
いかに人間を形作っていくか。幾度となく考えさせられます。
映画でも三船敏郎や加山雄三が、同じことを台詞として語り訴える場面が、
何度も出てきますが、少しばかり青臭さや上滑りな印象もあります。
比べると原作で、そうも感じないのは、抑制のきいた構成、表現が
青臭さを封じているとも言えるでしょう。
 
 小説では、時に人間を突き放し眺めている、
言い方を変えれば、登場人物と距離をもって作者は付き合っている
感じがあります。そのぶん、社会と人の関係、人と人の関係を、
俯瞰して見ていくことができるのですが、映画ではちょっと違います。
黒澤明には、判っていても耐えられないのでしょう。
首根っこを捕まえたまま放さない、良く言えば抱きしめ続けずにいられない、
それがヒョーマニストと言われる所以でしょうが、
作中の人物との距離感が違う感じです。
時には小説と違う結末すら用意されています。
 
 一方小説の方は、適度な距離が保たれているので、
社会の中で、人間という生き物が、如何に不条理に、
不思議に、素晴らしく、醜く、生きていくのか、
読者は考え続けることになります。
 
 黒澤明は、もう一歩進んで言わずにいられない性格なのでしょう。
「人間は醜いし、残酷だし、哀しい存在だけど、素晴らしいんだ。」
この「素晴らしいんだ。」という部分を強く言い切らなければ
気が済まないのだと思います。
映画の方は、全てがそうやってデフォルメされ提出されるので
小説を読むと、多少あっさり感があるのですが、
素晴らしい映画になった骨格が、この小説に全て存在することは、
紛れもないことと思います。




 

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