07年3月22日
この本では、冒頭で「2010年代の経営は、
~多様な人材を「理念・ビジョン」で共鳴させ、求心力と活力を持たせ、
その力で他のステークホルダーも惹きつけ、
企業価値を向上させるべきだと結論した。」と書かれている通り、
さまざまな価値観を持つ人材を束ねて、企業経営を進めなくてはならない
今からの時代は、理念・ビジョンを企業が示せるかどうかが
企業の発展には大きな役割を果たすと主張しています。
21世紀に入り、明らかに高度成長期とは違う経営環境、
バブル期とも違う経営環境に入っています。
そうした時代性を捉えて企業は変貌しなければならないのでしょう。
本書の指摘で気になったのは「1990年代までの不祥事は
一部の規制業者の癒着や総会屋をめぐる不祥事が大半である。
~2000年以降の不祥事の特徴は、~日常の業務の中から多発している。」
という部分。日常業務の中に、たるみ、モラルの低下、やる気の低下が、
蔓延しているということでしょう。
となると一部の社員が引き起こしたと言えないワケで、
根本的な治療が必要ということなのだと思います。
また、「現場」という概念を大切にすべきでは、という提言が印象的でした。
様々なプロジェクトは、様々な価値観を持った人材によって、
それも社員、契約社員、派遣、パート、アルバイトなど、
複雑な人員構成で進めなければならない。
そうした現場毎の要素を踏まえた上で、
コミットメントを高めなければならないと主張しています。
最後に、本書で紹介されていた「実験社会心理学研究」(1996年)の
人材の職場集団へのコミットメントが高まる、三つの条件とは、
A 自分がその仕事を行うことによって成長することができる
B 習得した能力を発揮し、
結果として出したパフォーマンスが周囲の人々に認知される
C 報酬としても報いられる
というものでした。
少々とっつきにくい本ではあるのですが、
時代の変化を特に人材という観点から捉えた労作だと思います。